たまご家には子どもが3人いるんですが、みんなそれぞれなんです。同じ親から生まれて、同じ家で育っているのに、性格も、得意なことも、響く言葉も、全然違う🥚

研究の世界の「再現性」

たまごの仕事は今、生物学系の研究なんですが、実験をやるうえでいちばん大事にされるのが 「再現性」 です。同じ条件で実験をしたら、毎回ほぼ同じ結果が出る。これがないと、その結果が「たまたま」なのか「本物」なのか分からない。研究は、この再現性の積み重ねで成り立っています。

例えば n=1のデータでいい結果が出ているようなとき、「いい感じだね、でもまずは サンプルを増やして再現性を確認しよう」というのが研究の世界の自然な流れです。

臨床医学の「ガイドライン」

ところが、これがそのまま当てはまらないのが 実際の医療・臨床 です。たまごは日本では臨床医として働いていましたが、同じ治療をしても 必ずしも同じ結果にはつながらない ということを、現場でずっと感じてきました。

とはいえ「こういう病気の人にこういう治療をすると、おおむね良い結果につながりますよ」というのは、ある程度はっきりしています。それを体系化したのが、近年主要疾患について整備されている 「ガイドライン」。「こう診断しましょう、こう治療しましょう」と、ベストプラクティスがまとめられたものです。

エビデンスと「個別化医療」

昨今は エビデンス(科学的根拠) が重視されて、「これがいまの最適な治療です」というものを臨床の場で提供することが当たり前になっています。患者さん側からしても、もちろんそうあって欲しいですよね。

でも、その最適なはずの治療でも、必ずしも全員にうまくいくとは限らない。これがいわゆる 個人差 です。その穴を埋めようとしているのが 「個別化医療(precision medicine)」 で、研究の現場では「なぜ大多数の人には効くのに、ある一定の人には効かないのか」を明らかにして、新しい治療法を開発しよう、というアプローチが進んでいます。

そして「症例報告」── n=1の積み重ね

ガイドラインや個別化医療と少し違う位置づけにあるのが、「症例報告(case report)」 です。「こんな珍しい病気がありました」「こういう治療が思いがけずうまくいきました」など、ガイドラインには入ってこない希少な症状・通常とは異なる治療への反応などを伝える記録。「みんながそうとは限らないけれど、こういうこともあるんだよ」という位置づけです。

症例報告は、本質的には n=1の記録 です。それでも、そこに これまでの常識を覆すような重要な発見の種が埋まっている ことが少なくない。新しい疾患の概念が生まれたり、思わぬ治療効果が見つかったり──医学はそうした「例外」の積み重ねでも前進してきました。

もしかすると AIの時代には、世界中の症例報告のような「個別の n=1 データ」をこれまで以上に統合的に解析できるようになって、その積み重ねの価値が もっと有効に活用される ようになるかもしれません。たまごとしては、そんな未来も楽しみだったりします🥚✨

そして、子育てはまさに「n=1」

ここでようやく本題(笑)。実は最近、こういう n=1の話 がいちばん身に染みるのが、子育てだったりします。

誰だって、子どもに幸せになってほしい、成功してほしいと思いますよね。じゃあ「どうやれば良いか」というと、まずは 自分の経験 がベースになる。「自分はこれでうまくいった」「ああしておけばよかった」──こういう振り返りを、つい子どもに当てはめたくなる。

でも子どもと親って、本質的には(当たり前ですが)別人 ですし、育っている環境も違う。ましてや、親の世代になかったもの への対応はそもそも分からない(📖 AIとかスマホとか)。じゃあ世の中の 子育て情報(YouTube・本・SNS…情報、本当にあふれていますよね)を頼るかというと、「こうなってほしければ、こう育てろ」的な情報も、結局は誰かのn=1の経験談だったりする。

結局、子育ては n=1の戦い なんですよね。自分の経験から「これがいい」と思ったものは、自分の子にはあまり通用しない(むしろ逆効果なことも?)。一人目の子で通用しなかったことが、二人目ではうまくいく。逆もまた然り。

兄弟でも、こんなに違う

もちろん兄弟だと育つ環境は似ているので、ある程度の傾向はあるのかもしれません。それでも、「これがハマる」というものが本当にバラバラなんです。同じ言葉、同じ働きかけが、一人にはスッと届いて、もう一人にはまるで響かない。

そして子どもが大きくなるにつれて、こちらが直接コントロールできる範囲はどんどん減っていきます。あとはもう、細かいことを言っても無駄かもしれない世界。背中で見せるとか、自分なりの信条を伝えるとか、効果があるのかどうかも分からない方法に頼るしかなくなっていく。


n=1を続けて、親の役割を終えていく

基礎研究では「再現性」を積み上げて、臨床医学では「ガイドライン」を作って個別化医療で穴を埋めていく。それぞれに、ちゃんとした「やりよう」がある。

でも子育てだけは、n=1を続けて、なんだかんだのうちに親としての役割を終えていく。それしかないんだなぁ、と最近よく思います。

臨床医学・基礎研究・子育て。3つともずっと近くで関わってきましたが、結局のところ、どれも本当に難しいですね。難しいけれど、難しいなりに、毎日 n=1 を積み重ねていくしかない──そう思いながら、今日も三者三様の子どもたちと向き合っています🥚

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